サイコな機長の偏愛生活



東京メトロ線表参道駅から程近い場所にある日本料理店。
全国から取り寄せる旬の食材をふんだんに使ったコース料理が定評で、中々予約が取れないと有名なお店。

彼のご両親と大将が仲がいいらしく、急な予約にも対応してくれたようだ。

VIP専用に設えられた個室。
彼が選んでくれたベルベットのワンピースがとてもよく合う。

個室なのに、中に小さなカウンターがあり、そこで板前がその場で腕をふるう。
魚介類が好きな私のために、彼が事前に注文していたようで。
次々と磯の香りを漂わせた美しいお料理が運ばれてくる。



「彩葉、……大丈夫か?」
「ん~っ……っ……」

美味しいお料理につられて、日本酒を少し飲み過ぎてしまった。

自宅マンションへと辿り着いた私は、彼に支えられながら洗面所へと向かう。

「歯ブラシ貸せ、俺が磨いてやるから」

シャカシャカと規律のいい音を立てながら、磨かれる心地よさ。
介護医療の授業で口腔ケアをし合った以来の、他人に磨かれるというその行為は、思ってる以上に恥ずかしさもある。

思わず歯ブラシを掴んで引き抜き、もう片方の手で彼のジャケットの襟を掴んで――。

「うっ……ンッ……」

気付いた時には、彼の口周りが歯磨き粉の泡だらけになっていた。

あぁ……酔ってて完全に痴女状態。
密着する体を離そうとすると、それを阻止するみたいに背中に彼の手が添えられた。

彼が纏う香りを堪能するように彼の胸に凭れると、背中のファスナーが下ろされた。
少し冷たい彼の指先の感覚で我に返った私は、鏡に映る姿があまりにも色気を孕んでることに眩暈を覚えた。

「彩葉の歯磨き粉、いい味するな」
「っっっ~~」

ぺろりと舌舐めづりをしながら洗面台に手をつき、美顔がにじり寄って来た。

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