サイコな機長の偏愛生活(加筆修正中)
指導医になって三週間が過ぎようとしていた、ある日。
出勤すると、デスクのパソコンに『二十四日、十三時に院長室へ』というメモが貼られていた。
「山田くん、部長は?」
「今日は非番の日だったと思いますけど」
本当に役に立たない人だ。
こういう取次ぎメモの詳細を知りたかったのに。
院長秘書が書いたと思われるメモをデスクの端に張り付け、パソコンを立ち上げる。
出勤して一番最初にする仕事『メールボックスのチェック』だ。
海外の学会情報だったり、担当した患者からの近況報告的なお礼メールだったり。
それと、現在海外研修を積んでいる葛城先輩からの研修詳細の報告だ。
「おはようございます」
「……おはようございます」
「まだ怒ってるんですか?」
元宮くんが、パソコンと私の顔の間にひょいと顔を挟み込んで来た。
「っ……、近いっ」
「挨拶してるんですから、顔くらい見て下さいよ」
「はいはい、分かったから」
距離にして十センチほど。
ちょっと体を前のめりにしたら、唇が触れそうなほど近い。
それにこの状況、山田くんに勘違いされてしまいそうだ。
「メールチェックしてるんだから、邪魔しないで。もう勤務時間内でしょ」
強引に頭を押し退けた。
そんな私の行動を楽しむかのように、元宮くんはくすっと笑う。
「三分後にナースステーション行くから、先に行ってて」
「はぁ~い」
調子が狂う。
一週間前から、何度となくさっきみたいな揶揄うような試すような素振りを見せる彼。
別に『好き』とか『付き合って』みたいな言葉はかけて来ないけど。
あからさまに態度が急変したのは事実。
完全に懐かれている。
それも、他のスタッフがいてもお構いなしのアピールがハンパない。