サイコな機長の偏愛生活(加筆修正中)

**

六時間半の長丁場を終え、医局に戻った彩葉は、ソファーに座り込んだ。
すると、プシュッと音と共に目の前に炭酸水が差し出された。

「お疲れさまでした」
「元宮くんも」
「いつ見てもメス捌きに迷いが無くて、縫合も丁寧ですし、尊敬します」
「褒めても、ご飯には行かないよ?」
「えっ、まだ環先生を口説いてるんですか?諦めた方がいいですよ?環先生の彼、完璧男(パーフェクトマン)ですから」

医局で休憩中の尾崎くんがフォローしてくれた。

「別に俺、口説いてなんていないですよ?」
「またまたぁ~。今朝だって、子犬みたいにしっぽ振って追いかけ回してたじゃないですか」
「あれは、敬愛の念を送ってたんですっ」

すっかり他のスタッフとも打ち解けてる元宮くんは、悪びれた様子もなくしれっと言い切って、ドカッと隣りに腰を下ろした。
肩が軽く接触する。
別にどうってことないんだけど。
何だか、近くにいられると変に気を遣ってしまう。

「今日、仕事終わりに飲みに行きません?」
「うわぁ~、懲りずにまた誘ってるし」
「行かない。ってか、しつこい」

全然へこたれないというか、全く気にする様子もなく。
もしかしたら、私の反応を楽しんでるだけなのかもしれない。

「元宮くんって、彼女いるの?」
「おっ!やっと俺に興味を示してくれたっ!!」
「あ、いや……そういう意味じゃなくて」

デカい図体という言葉がマッチするような、かなりマッチョな体躯で。
たまにシュンと子犬みたいな表情をする。
患者の対応は底抜けに明るくて優しいし、執刀する時は真剣な表情で鋭い視線を常にキープしてる。

幾つもの顔を持つ彼。
興味が湧くというより、こういうタイプの男性なら、彼女がいてもおかしくない。
郁さんほどではないけれど、美形なのは確かだ。

< 55 / 182 >

この作品をシェア

pagetop