サイコな機長の偏愛生活(加筆修正中)

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「彩葉、休みのところ呼び出して悪いな」
「先輩、借りが三つくらい溜まってますよ?」
「フッ……、マジで後で穴埋めするから」

ブルーグレーのスクラブ着にルーペ装着姿の彩葉と、長身の男前医師が手術前室へと足を踏み入れた。

彩葉が勤務する東京白星会医科大学病院で一、ニを争うイケメン医師。
彩葉と同じ胸部外科の医師であり、准教授でもある葛城(かつらぎ) (じゅん)(三十三歳)。
彩葉の一つ先輩で、若手医師のホープでもあり、凄腕外科医として有名である。

既に帽子とマスクを装着している二人は入念に手洗いし、その手をどこにも触れないようにして、手術室のドア横下部にある光センサーに足先を翳す。
ウィーンという音と共に手術室のドアが開き、手術室内部にいるオペナースや麻酔科医らが一斉に二人に視線を向けた。
二人の入室で、看護師らに緊張が走る。
これから、緊急オペが行われるからだ。

入口で待機しているナースによりガウンと手袋が装着され、二人は患者の両サイドに立つと、より一層緊迫した空気に包まれた。

「タイムアウトを」

彩葉が口を開くと、室内にいるスタッフ全員が静止する。
そして、その場にいるスタッフ全員で最終確認が行われる。
(タイムアウト:麻酔導入前に執刀医・麻酔医・看護師等が一斉に手を止め、患者の氏名・カルテ番号・生年月日・血液型、術式、手術部位等の確認を行い、手術における事故を防止する取組みのこと)

最終確認を終えた執刀医二人はアイコンタクトを取り、小さく頷く。

「BO(閉塞性細気管支炎)に伴う、緊張性気胸の補助装置の装着手術を行います。……メス」

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