サイコな機長の偏愛生活

エレベーターで二階に下りて、『生理機能検査室』と書いてる表示をフロアマップで確認する。

そして、T字の通路を右に曲がった、その時。
その先にある生理機能検査室から彩葉がスクラブ着の上に白衣を纏った姿で出て来た。

「彩っ……」

思わず、噤んでしまった。
彼女の後ろからあの男性医師が追いかけて来たのだ。

財前の方へと向かって来る二人。
そのまま立っていればいいのに、無意識に踵を返して隠れてしまった。
休憩室のような自動販売機のあるブースの中に。

「人目につかないとこ行こう」
「臨床講堂とかですかね?」
「あっ、うん。あそこなら普段誰もいないよね」

二人が話しながら通り過ぎて行った。
それも、爆弾発言とも思える会話をしながら。

何故、わざわざ人目がつかない所に行く必要があるのだろうか?
胸騒ぎがする。
来なければよかったと後悔してももう遅い。

しっかりと言葉を拾ってしまったのだから。



自宅に帰ろうと何度も脳に指令を出してるのに。
耳にした言葉を綺麗さっぱり忘れ去ろうと試みてるのに。
全く出来そうにない。

足が勝手に彼らの後を追っている。

聞かなかったことにして、知らないふりして、いつも通りに過ごした方が波風が立たないのは確か。
けれど、今の自分にそれが出来るだろうか?

今朝の様子と数日前の様子もそれに重ね合わせた結果。
体が勝手にこうして答えを探し求めてしまっている。

東棟の二階にある臨床講堂の手前にあるロビーに二人はいた。
くの字型の廊下の突き当りに位置していて、アーチ状の大きな窓ガラスに面している。
そんな彼女の目の前に跪いた男性医師は、ポケットから小さな箱を取り出し、それを開けた。

その行為を俺は知っている。
数か月前に同じ行為を俺もしたから。
……同じ人物に。

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