彼氏がヒミツにする理由
中学時代の戦果は勉強とスポーツを頑張ったことくらい。
俺は吉葉さんを知っているけれど、吉葉さんは俺のこと知らないんじゃないか……。
せめて彼女の世界に俺がいてほしくて、噂されるほどすごいものを作るために学年で1番の成績を取り続けた。
定期試験は3年間トップを守り抜いたし、マラソン大会でも1位を取った。
その成果は高校に入学して現れて。
“夏見くんすごいね!中学のときもずっと1番だったもんね”
新入生代表のあいさつを終えた俺に、吉葉さんがそう声をかけてきた。
頑張ってよかった、なんて単純だけど感動したのを覚えている。
だからって俺と吉葉さんの関係が大きく変わることはなかったけれど、そのできごとを境に俺の気持ちは変わっていった。
“このまま3年間を終わらせたくない”という焦燥。
“できるなら吉葉さんとつき合いたい”という欲望。
臆病に抑えつけられていた感情が、日に日に増していった。
そして、バレンタインの日。
ゆっくり育んだ気持ちが開花した。