日ごと、君におちて行く。日ごと、あなたに染められる。
〜ハッピーエンドのその後に〜




 季節は春――新しい年度がやって来た。

 デスクの上の卓上カレンダーを眺める。
 ”4月”のそれには、もう既に仕事上のスケジュールがびっしりと書かれている。その中で一日だけ、他とは違う色で囲まれている日がある。

 4月12日。それは、華の誕生日。思い返してみれば、彼女に突然告白された日から一年経った日でもある。

 あの時は、まさか一年後にこんな未来が待ってるとは思ってもみなかった。想像も出来なかった楽しい未来を、今、歩いている。

 初めて二人で迎える華の誕生日だ。どんな一日にしよう――そう考えると、つい口元が緩む。

 2月の僕の誕生日を思い出してみようとして、それはやめておいた。思い出してしまったら、口元が緩む程度では済まなくなる。

 ちらりと華の席の方に視線をやる。

 目から上だけが見える。相変わらず真剣で可愛い顔だ。少し眉間に皺を寄せながらパソコンのディスプレイを睨んでいる。

 こうやって、いつでも華を見ることができる環境もあと少し。おそらく、今度の人事異動で華は異動になるだろう。僕たちが夫婦だからそれは仕方がないことだ。こうして今、同じ課にいられることの方が奇跡だ。

 その先を考えると寂しくもあるが、あの来栖の魔の手から引き離せると思えばそれもいいことだ。そう自分に言い聞かせる。



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