⑥姫は成瀬くんに守られたい✩.*˚

第4話 騎士を想像

 なんとか追いつかれずに学園の敷地内に戻ってきた。
 校庭で走っている生徒たちが目に入る。

「とりあえず人も沢山いるし、ここまで追いかけてきて襲ってくることはないと思う」

 成瀬くんがそう言い、私の手を離した。ふたりの進む速度は落ち、ゆっくり歩く。

「はぁ、疲れた」

 玄関に入り私は座った。中に入っても成瀬くんは立ったまま。周りをまだ警戒している様子。

「それにしても、偶然先生がいないこのタイミングで……」
 私は外の生徒たちを眺めながら言う。
「偶然じゃない……」
「えっ?」
 彼を見ると目が合う。
「だって、根本……」

「あ、いた! 二條さん!」
 話の途中で若槻先生が玄関に来た。
「二條さん、外にいたの? 寮にいるのかな?って思って覗いて見たけどいなかったからちょっと心配したわ」

 あれ? 確か、外に出るの先生に言ってきてあげるって根本くんが……。

「根本くんから何も聞いてなかったですか?」
「ん? 根本くん? 何も聞いてないけど……」

 私は成瀬くんと再び目を合わせた。

 それから、今起こった誘拐未遂事件を先生に話した。
 先生の顔は青ざめていた。

「私がきちんと代わりに二條さんを守る人、見つけていれば……怖い思いさせてごめんなさい」

「いえ、私が勝手に外へ行ったのが悪いんです」

 そう、さっき根本くんに誘われた時にはっきり断れば良かったんだ。

 自分の行動のせいで、こんなに心配させてしまって……。ずしんと気持ちが重たくなる。
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