⑥姫は成瀬くんに守られたい✩.*˚
 あれから連日夜、電話で話をするようになった。いつも彼から電話をかけてきてくれた。

 そして「今日は大丈夫だったか?」って聞いてくれて、ひとことふたこと話して終わり。

 教室ではよく目が合うようになってきた。相変わらず話さなかったけれど。

 成瀬くんは入学した日からずっと、怖いヤンキーで冷たいイメージだったけど、もしかして本当は優しいのかな?って気がしてきた。

 騎士は成瀬くんがいいな――。

 日がたつにつれ、その思いは募っていく。伝えてみようかな?

 電話で伝えるようかな?って思ったけれど、直接の方がいいよね?

「成瀬くん、放課後話したいことがあるの。教室に残っててくれる?」
「あぁ、分かった」

 ふたりで話をしたかったから放課後、若槻先生にはその間だけ廊下で待ってもらって、成瀬くんと教室でふたりきりになった。

「話って、何?」
「成瀬くん、私ね……」

 断られたらどうしようって途中で思う。
 でも思い切って、言ってみよう。

「私ね、成瀬くんに騎士になって欲しいの」

 言えた。
 言えたけど、成瀬くんの反応がない。

「ダメ、かな?」
「いや、ダメじゃないけど、まさか俺が選ばれるなんて少しも思ってなくて」

 しばらく彼は眉間に皺を寄せ、考えている様子だった。

「うん、分かった。俺、騎士やるわ」

 そう答えてくれて、心の中でほっとした。
 言ったあとの彼の反応、完全に断られるかなって思っていたから。 

「ありがとう」

 きちんと決まるかな?って、ずっと不安だったから、よかった!

 これで騎士を誰に決めるかの悩みは解決した!って、思っていたのに――。
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