⑥姫は成瀬くんに守られたい✩.*˚

第8話 【成瀬 樹 視点】仮の騎士

 これから連休に入る。

 俺らは土日と祝日だけ休みで、休日が飛び飛び。だけど姫たちは丸ごと休みらしい。

 だから5月の1日2日は平日だから、二條がいない学園で過ごすことになる。そして連休明けの8日に朝から姫と騎士はリハーサルを軽くしてそのまま騎士の叙任式が始まる。

 連休が終われば、俺は二條の騎士になる。

 初めは騎士になるのがただ面倒くさくて、姫とは関わりたくないと思っていた。けれど、事件があってから二條のことが気になってきて。

 根本がもしも騎士になって、二條の隣にいる姿を想像するだけでモヤモヤした……。

 頼まれた時はまさか自分が指名されるとは思ってなくて信じられなかったけど、やるからには二條を守りたいと心から思えるようになっていた。

 それなのに……。

 連休の2日目、朝スマホを覗くと二條からその文章が来ていた。


『騎士の件ですが、やっぱり根本くんに頼もうかなと思います。お願いしたのに、ごめんなさい』

 すぐ二條に電話した。

「どういうこと? なんで?」

 自分でも取り乱した話し方なのが分かった。普段はこんなに乱れることはないと思う。こんな自分になるのは人生に数回の出来事だと思う。

「お願いしたのに、ごめんなさい」
「なんでって訊いてるんだけど?」
「いや、あの……」

 根本から何か言われたのかなと思った。
 電話では絶対理由を言わなさそうだなとも。

「じゃあ、1日だけ仮の騎士をさせて欲しい。それから最終判断をしてくれれば」

 自分でもなんでこんな提案をしたかはよく分からない。理由なんて、なんでもよかった。ただ直接、会って聞きたかった。

「えっ? 仮の騎士?」
「ダメ?」
「ダメって聞かれても……」

 間があき、再び彼女は言った。

「もしその“仮の騎士”をするなら、いつがいい?」
「明日と明後日は俺ら、授業あるから……その次の日、3日!」
「うん、分かった。」

 とりあえず、会える約束は出来た。
 仮の騎士になっても、当日することはまだ何も考えてない。考える余裕はなかった。

 二條のことになると、余裕がなくなる。
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