⑥姫は成瀬くんに守られたい✩.*˚
「ねぇ、この動画だけ見たら、成瀬が一方的に悪い人にみえない?」

「えっ?」

 確かにそうかもしれない。
 動画にはその時近くにあった車も、私をさらおうとした人たちも映っていない。映っているのは、草木や根本くん、そして成瀬くんだけ。

「もし俺が沙良ちゃんの騎士になれるなら、この動画削除してあげる。でも、もしも成瀬を騎士にするなら、この動画広めちゃおっかな……そしたらどうなるだろうなぁ。沙良ちゃんの家ほどじゃないけど、うちも結構この学園に対して影響力あると思うし。彼は停学、いや、退学になっちゃうかなー?」

 私のせいで、成瀬くんが退学?
 ただ彼は私のことを助けてくれただけなのに?

 嫌だ――。

「すぐには決められないから……考えさせて」

 だって、もう成瀬くんにお願いしたし、正直他の人は考えられない。

「分かった。いい答え、待ってるね」

 ちょうど話し終えたところで成瀬くんが教室に戻ってきた。最近は目も自然と合うようになって、今もばっちり合う。

 そしてちょっとだけ微笑んでくれた。

 明日は4月29日。ゴールデンウィークが始まる。明日からは会えなくなる。だって私は5月7日まで、他の生徒よりも長めの休みで、期間中は家に帰るから。

 そして連休明けの8日が騎士叙任式の日。

 私は成瀬くんに騎士になって欲しいけれど――。

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