⑥姫は成瀬くんに守られたい✩.*˚

第10話 騎士の叙任式

 連休が終わり、遂に入学してから1ヶ月がたった。
 今日は叙任式が行われる。

 正式に姫を守る騎士が決まり、披露される日だ。

 成瀬くんが私のせいで退学してしまうのが嫌だから、私は根本くんを指名する。

 そう決意したはずなのに、気持ちはずっとモヤモヤしている。

 騎士の叙任式はこの学園では特別な行事のひとつ。朝からそれぞれのクラスの色のドレスに着替えたり、ヘアメイクもプロの人にやってもらったりで姫たちは忙しい。その後は、生徒たちが集まる前に本番を想定して、本番が行われる講堂で軽くリハーサルする。

 姫たち4人が先に講堂の控え室に集まり、後から騎士になる予定の4人もやってきた。

 それぞれのクラスの姫と騎士はすでに絆を深めている様子で仲が良さそうだ。

 私たちのクラスだけ、なんだかどんよりしている。
 根本くんが話しかけてきた。
「沙良ちゃん、赤いドレス似合って綺麗だね」
「……ありがとう」
「緊張する?」
「……」

 何も答えたくない。
 なんとなく目も合わせたくない。

「脅しちゃってごめんね。でも、こうでもしないと沙良ちゃん、俺を選んでくれなかったから」

 返す言葉が見つからない。

「俺、沙良ちゃんのこと、好きだから。絶対守るよ」

 うそっぽい。

 心の中で私は呟く。

 好きなら……守るなら、誘拐未遂なんて私を怖がらせること計画しないだろうし、あんな脅迫なんてしないよ。

 根本くんの言葉は軽い。
 成瀬くんは口下手だけど、ひとつひとつの言葉がずっしりしていて心に響く。

 成瀬くんが騎士ならよかったな――。

 根本くんに聞こえないようにして、深いため息をついた。
 

 

 
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