すべてを奪われ忘れ去られた聖女は、二度目の召喚で一途な愛を取り戻す〜結婚を約束した恋人には婚約者がいるそうです〜


 しかも幸運なことに、カイルも同じ気持ちでいてくれたのだ。旅の終わりが近づき、瘴気が出ている最後の場所に向かう前日。二人で街の宝石店に行き、お互いの聖魔力を込めたネックレスを交換した。


「次の任務が終わったら、王都に帰れる。サクラ、俺と結婚してほしい」
「嬉しい……! 私もカイルと結婚したい!」


 それなのに、その後のことが全く思い出せないのだ。気づけば私はこの部屋に戻ってきていて、呆然としたのを覚えている。


 なんで戻ってきてしまったのか? 魔法陣を踏んだ覚えもなく、ただ目覚めたら日本に戻っていた。もしかしてすべて私の妄想だったのかと考えたけど、胸元にあるカイルの聖魔力が入ったネックレスが、現実にあったことだと示していた。


 カイルに会える気がして、何度もさわったネックレス。蓋のついた瓶がチャームになったそれを、私は日本にいても肌身離さず身につけていた。


「一年か……なんで戻れないの?」


 どんなにそのネックレスに願っても、カイルのもとに戻ることはなかった。それでも諦められない私は、今日もこのネックレスをさわって、眠りについた。

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