すべてを奪われ忘れ去られた聖女は、二度目の召喚で一途な愛を取り戻す〜結婚を約束した恋人には婚約者がいるそうです〜

(短絡的な行動をする二人だ。すぐに魔術で呪った形跡が見つかるかと思ったのに)


 それにあの呪い。あまりにも非道すぎる。大の大人の男であるジャレドでも血を吐くほどの痛みを聖女に与えていたなんて。王宮に現れた時も話そうとするたび、サクラ様は苦しそうに咳き込んでいた。


「ふむ。少しだけエリックと話してみたいが……」
「それは許可できません。せめてジャレドとカイル団長が同席していないと無理でしょう」
「やはりそうか。それなら彼らが忘却の呪いを解いてからにしよう。数日後にはケセラの町に旅立つんじゃないか?」
「どうでしょうか。サクラ様の魔力が溜まらないと浄化ができないでしょうし。……まあ、団長がせっせと聖女様に魔力を注いでそうですがね」
「ふっ……そうだな。おっと、さっきの報告をしないとな」


 きっと団長宛だろう。殿下は笑いながら、サラサラと先ほどの報告を紙に書いている。


「これは司教様宛だ。そしてこっちがカイルだな」


 そう言って殿下が二通の手紙を魔法陣に乗せると、ふわりと浮いて壁をすり抜け飛んでいった。


「さ、また仕事をするか。今度は婚姻の件でサエラ国に手紙を書かないといけないな。ケリーはこのまま他の者に代わってカイルと合流していいぞ。二人で聖女の護衛をしっかり……おや? ケリー、腕から血が出てないか?」
「え?」


 突然の指摘にあわてて自分の腕を見ると、たしかに右腕に赤い線のようなものがシャツについていた。そのままシャツをめくって確かめると、たしかに引っかかれたような傷があり血で滲んでいる。
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