すべてを奪われ忘れ去られた聖女は、二度目の召喚で一途な愛を取り戻す〜結婚を約束した恋人には婚約者がいるそうです〜


 俺の態度に殿下は呆れ、ケリーやアメリはニヤニヤと笑っているがどうでもいい。ちゃんと結婚をするまでは不安でしょうがないのだ。一度そう殿下たちには伝えたのだが「結婚後も一緒だと思うぞ」と言われてしまった。


 そんな殿下は「カイルは本当にからかいがいがあるな」なんて笑いながら、ようやく執務室に戻っていった。


「それでドレスは決まったのか?」
「うん! 初めからイメージがあったから、すぐ決まっちゃった」


 アメリが気を利かせてくれ、俺たちは外のテラスでお茶をしながら話をしている。当たり前のように手をつなぎ顔を寄せ合って話す姿を過去の俺が見たら、驚いて自分じゃないと言い出すだろう。


「あのね、私のいた世界では結婚式の時は白いドレスで、お花のブーケを持つの。でもドレスは用意できるんだけど、私が持ちたい花はブーケには向いてなくて。それでドレスを白じゃなくて、そのお花の色にしようって決めたんだ」


 かたくなに「お花」とこだわる彼女の言い方で、すぐにその花の名前がわかった。


「それはもしかして『サイラ』のことか?」
「えっ! すごい! カイルよくわかったね!」
「わかるさ。サクラとサイラは似てる花だって教えてくれたじゃないか。それに記憶がない時に仮の名前にもした」
「うん……」


 俺は握っているサクラの手に力を込める。
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