すべてを奪われ忘れ去られた聖女は、二度目の召喚で一途な愛を取り戻す〜結婚を約束した恋人には婚約者がいるそうです〜
「それにプロポーズした時に、結婚して女の子が生まれたら名前はサイラがいいなと話した時があっただろう?」
その言葉にサクラが顔を上げた。一番覚えていてほしかった会話なのだろう。頬を染め潤んだ瞳で俺を見つめている。俺にとっても一番大切な思い出で、サイラは大切な花だ。
(満開のサイラの下で君にプロポーズをしたのだからな……)
「あの仮の名前をつけた時ね、その会話も思い出したの。それでもうすぐサイラの花が咲くでしょう? だから薄いピンク色のドレスがいいかなって」
結婚式を執り行うのはもちろん聖教会だ。司教様自らが執り行い、教会側も張り切って準備している。その頃には教会の庭にもサイラの花が満開になっているだろう。
「良い結婚式になりそうだな」
「うん! みんなで楽しく過ごせる時間にしたいの」
俺たちは笑いあい、そしてお互いの気持ちを確かめ合うようにぎゅっと手を握った。