すべてを奪われ忘れ去られた聖女は、二度目の召喚で一途な愛を取り戻す〜結婚を約束した恋人には婚約者がいるそうです〜

「おはようございます、アンジェラ王女。今日はなにやらご機嫌ですね?」
「あら、カイル! ちょうど良いわ。あなたに特別な役目を、あげようと思っていたところなの!」


 朝の挨拶を口実に王女の様子を見に来たのだが、ケリーの情報どおり出かける準備をし護衛騎士を集めていた。しかし、その騎士も俺の指示が間に合ったようだ。この場に集められた部下に目で合図をすると、俺は何食わぬ顔で王女のほうに歩いて行った。


「実はね、あれからお父様に昨日の侵入者のことをお伝えしたの。そうしたら、私の命を狙ってたんじゃないかって怒ってしまって、処罰が必要だって言うのよ?」


 にっこりと笑う王女の顔は、初めて会う人なら無邪気で可愛い貴族令嬢に見えるだろう。しかしこれから行う処刑のことを知っている俺にとっては、そのあどけない笑顔こそが不気味に感じる。


「陛下が? しかしあまりにも急ですし、まだ取り調べが終わっておりませんよ。処罰はアルフレッド殿下が帰ってからでも遅くはありません。もう一度お考え直ししていただくことは――」

「カイル! なにを言っているの? あの女はわたくしを狙ったのよ? 王宮に侵入したのも、もうすでに何かを仕掛けた後かもしれないわ!」

「それなら、なおさら生かして取り調べをしなくては」
「もういいわ! 今日の処刑は決まったことなの。お兄様がいたとしても、お父様の印があるこの書類があれば、誰の意見も関係ないわ!」
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