すべてを奪われ忘れ去られた聖女は、二度目の召喚で一途な愛を取り戻す〜結婚を約束した恋人には婚約者がいるそうです〜

「さあ、入ろうか」


 町に入ってみると、色とりどりの野菜やお肉を売っている市場になっていた。その後は工芸品やお土産屋さん。またいろんな国の人が商売をしているようで、私がこの国では見たことがなかった服や小物も売っていた。


(たしかにここなら、私は目立たないかも……)


 カイルのマントをすっぽりかぶりながらキョロキョロしていると、そのまま連れて行かれたのは洋服屋さんだ。


「すまないが、森で転んでしまったんだ。このくらいの背丈の女性の服を、靴まで一式揃えてくれないか? それとこの服とバッグも買おう」


 カイルはあくまで私の姿を見せたくないようで、うまい言い訳を作って私の服と自分の着替えを買っていた。その場で着替えさせてもらい、またマントをかぶせられる。


「これで見た目は大丈夫だろう。あとは今晩の宿だな。祭りの時期でもないから、すぐに見つかるはずだ。本当は野営も覚悟していたのだが、うまい具合にこの町近くに転移できて良かった」


(そうだった。教会には結界があるから、許可された者以外は直接転移はできないんだよね。許されてるのはジャレド師匠くらい?)


 その師匠だって遅刻魔だったから、司教様が渋々許可したくらいだ。許可されていない者が教会に転移しようと試みると弾かれてしまい、どこに転移するかわからない。
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