すべてを奪われ忘れ去られた聖女は、二度目の召喚で一途な愛を取り戻す〜結婚を約束した恋人には婚約者がいるそうです〜


(成功して良かった。さすがに今日は寝不足だし疲れているから、ベッドで眠りたい)


 予想どおり宿は空いていたようで、すぐに案内してもらうことができた。宿の主人の案内を断り、そのまま二人で部屋に入っていく。


「もうマントは取っていいぞ」


 ぷは〜と大きく息を吐いてマントを脱ぎ、部屋の中を見回す。どうも日本にいた時の癖で、宿屋につくと部屋を探検したくなる。


(小さい町だけど賑わってるからか、綺麗な宿だな〜。あ! 珍しい! ウェルカムフルーツがある!)


 そんな私を横目で見ながら、カイルは荷物を片付けている。すると私はある重要なことに気がついた。


(あれ……ベッドが一つしかない)


 聖女として旅に出ていた時も、こういった宿に皆で泊まったことはある。だから私も今回カイルが宿に泊まると言った時も、当たり前のように喜んでいた。


 でもその時の私はたいていお世話をしてくれるアメリさんと同室で、いわゆるベッドが二つのツインルームの宿。しかし今回の宿はどうやら、大きなベッドが一つだけだ。


 私はその目の前の光景にゴクリと喉を鳴らし、顔を真っ赤にして立ち尽くしていた。
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