すべてを奪われ忘れ去られた聖女は、二度目の召喚で一途な愛を取り戻す〜結婚を約束した恋人には婚約者がいるそうです〜


(お、お尻がいた〜い!)


 しっかりつかまっていても、スピードが早いのでお尻がバウンドして痛い。私があと少しでお尻の皮がむけそうだと心配し始めた頃、ようやく目的地に到着した。


「ほら、あそこが聖教会だ」
「…………」


 懐かしい景色に、胸の奥が苦しい。もうこの辺りの道は私がよく知っている場所で、この場にいるだけで切なくなってくる。遠くに見える教会の建物もなにひとつ変わっていない。


 私はまるで浄化の旅から帰ってきたような気持ちで、涙をこらえながらじっと見つめていた。すると教会の入り口からひょこっと人が出てきた。その人は驚いた様子で、また中に入っていく。


「……やはり知られていたか」
(え? なに?)
「いや、大丈夫だ。行こう」


 そのまま馬を走らせ教会の入り口で止めると、そこにはたくさんの人がずらりと待ち構えていた。私たちが現れると同時に中央にいる人だけを残して、皆ひざまずく。


「お待ちしておりました。カイル・ラドニー聖騎士」


(司教様……)


 たくさんの人を後ろに従えて立っているこの人こそ、私をオズマンド国に召喚した司教様だった。

< 73 / 225 >

この作品をシェア

pagetop