すべてを奪われ忘れ去られた聖女は、二度目の召喚で一途な愛を取り戻す〜結婚を約束した恋人には婚約者がいるそうです〜


「……本当にあなたが、聖女なのか?」
「は、はあ……そうですけど」


 もう一度そう答えるも、どうも信用していない様子だ。するとマッサージのために、うつぶせで寝転んでいた師匠が、ブルブルと震え始め、しまいにはプッと吹き出してしまった。


「ハハハ! もうダメ! サクラ、何回言っても信じてもらえなくて、不憫過ぎるだろ」
「だったら、師匠からこの人に言ってくださいよ。私が聖女だって!」


 自分で言っといてなんだけど「私が聖女です!」と宣言するのは、むず痒くて言いにくい。しかも途中で師匠が体を起こしてしまったから、今までやった授業がパーだ。


 腹が立った私は、問題の騎士をジロリと睨んだ。


「それで、なんの御用なんでしょうか?」
「……国からの瘴気浄化の要請の書状を持ってきた。しかし君が本物の聖女だとしても、とてもじゃないがやり遂げることはできないだろう。その旨、私から伝えておいてもいい」
「え?」


 なんだか国からの書状というのも凄い情報だけど、その後に私のことを馬鹿にしたことを言ってなかった?


(なんなのこの騎士! 私がどれだけ毎日頑張って、浄化の練習してると思ってるのよ!)

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