すべてを奪われ忘れ去られた聖女は、二度目の召喚で一途な愛を取り戻す〜結婚を約束した恋人には婚約者がいるそうです〜

「ちょっと来てください!」
「お、おい。いきなり何をする!」
「いいから、来て!」


 強引に騎士の腕をつかみ、私はずんずんと練習場に入っていく。そこには司教様が革袋に集めた瘴気がたくさんあり、私はいつもこれで練習をしていた。


(その成果を見せてやるんだから!)


「そこで見ててくださいね!」
「……ああ」


 そっと革袋の紐を緩めると、一気に黒い瘴気があふれ出してきた。私はそれを手で包み、そっと自分の胸元に持っていく。ゆっくり、あせらず。師匠に言われたコツを頭で繰り返し、瘴気を体に取り込んだ。


 そしてゆっくりと息を吐き、浄化した綺麗な「気」として空に放った。私から出たキラキラと光る聖魔力の粒が入っている気は「聖気」と呼ばれている。その聖気が空に溶け込んで、この国の結界に届くと、成功だ。


 私は空高く飛んでいった聖気をにっこりとほほ笑みながら、見つめていた。


(ほ〜ら! 完璧にできたもんね! これで私が聖女だって、信用してもらえるでしょう!)


 くるりと騎士のほうを振り向き、自信満々の顔で「いかがでしたか?」と感想を聞いてみる。すぐに「あなたが聖女様だったのですね! 先ほどは無礼なことを!」なんて謝ってくれると確信していたのに、なぜか目の前の騎士は呆然としていて何も話さない。


 その反応の悪さに、私はある重要なことに気づいた。
< 9 / 225 >

この作品をシェア

pagetop