すべてを奪われ忘れ去られた聖女は、二度目の召喚で一途な愛を取り戻す〜結婚を約束した恋人には婚約者がいるそうです〜
(や、やばすぎる! こんなカイルの顔、見たことない!)
パンパンと大きな音をたて背中を叩くと、ようやく師匠は私の体を離してくれた。するとすぐさまカイルに腕を引っ張られ、今度は彼に抱きしめられる。師匠はその光景を不思議そうに見て、首をかしげている。
「え〜? 君たち恋人になったの? それとも結婚したとか? サクラ、人妻? なんだかそれも良い響きだな〜」
「な! なにを言っているんだ!」
(そういえばカイルと恋人になったのは、最後の旅だったから師匠は私たちが結婚の約束をしたこと知らないんだよね。まあ、今のカイルには記憶がないから、意味ないけど……)
のらりくらりとした師匠の言葉に、カイルは顔を赤くして動揺している。それでも彼の言葉でよけいに私を抱く腕に力がこもり、離そうとしない。
師匠は師匠で、カイルの言動に混乱しているようだ。頭に「?」マークが浮かんでそうな顔で、私とカイルを交互に見ている。