すべてを奪われ忘れ去られた聖女は、二度目の召喚で一途な愛を取り戻す〜結婚を約束した恋人には婚約者がいるそうです〜


「はあ? じゃあ、俺がサクラを抱きしめてもいいじゃないか〜。弟子を抱きしめるのに、君の許可はいらないはずだけど?」
「で、弟子? さっきからなにを言ってるんだ!」


 噛み合わない二人の会話にどうしたものかと考えていると、背後から大きなため息が聞こえてきた。


「二人とも、いいかげんにしなさい!」


 カツカツと靴音を立て私たちの間に入ると、司教様は「お昼の前に状況を整理しましょう」と提案した。その言葉にカイルはうなずくが、師匠は「え〜お腹空いてるのに」と言って司教様に睨まれている。


(本当にこの人は……。でもこれで師匠が私を覚えている理由がわかりそう!)


 私は緩んだカイルの腕からサッと出ると、すぐさま椅子に座った。言葉が話せないなら態度で示さなくては。すると皆も椅子に座り始め(師匠は渋々だったけど)、司教様による師匠への尋問が始まった。

< 87 / 225 >

この作品をシェア

pagetop