【コミカライズ】そんなことも分からないの?
 リオネルの厳しい声音に、イネスはハッと顔を上げた。彼は鋭い目つきでイザベルを睨み、イネスを彼女から遠ざける。イネスの瞳に涙が滲んだ。


「なっ……! わたくしが分かっていない、ですって?」

「そうだ。君は大事なことをなに一つ分かっちゃいない。
どれだけ知識が豊富だろうと、論理的な思考ができようと、そこに真心がなければ、何の役にも立ちはしない。
どうして専門家が存在している? なんのために文官が存在している? 彼らに知識で勝ったところで、君自身に一体なにができる? 彼らに成り代わって仕事ができるわけでもないだろう? 君は、そういったことを考えたことがあるのか?」

「そ、れは……」

「君がしたり顔で披露する知識や常識は、皆が知っていて当然なものだと本当に思っているのか? 臣下が、侍女たちが、国民が理解できて当然だと。そんなにも普遍的なものだと思っているのか?
だとしたら、愚かとしか言いようがない」


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