鎖に繋がれた月姫は自分だけに跪く竜騎士団長に焦がれてやまない

01 鉄巨人

 緑の地平と呼べる広い草原を、一人の少女は必死に走っていた。

 幾重にも積み重なる耳障りな歯車の音が、背後から追いかけてくる。辺りに響き渡る、甲高く唸る駆動音。

(止まることのない、不死の鉄巨人(ゴーレム)。私を捕らえるためだけに、喚び出されたもの)

 姿を見ている訳ではないというのに、追いかけているものが何であるかなんて、もう嫌になるくらいに理解していた。

 荒い息を重ねて、オデットはドレスの裾を持ち上げて走っていた。

 これまでに数え切れない程に脱走を繰り返してきたオデットにはどんなに走っても走っても、あの禍々しい鉄巨人からは自分は逃げられないことはわかっていた。

 どんな仕組みなのか回転を続けている機械部分が覆われることもなく剥き出しになっている鉄巨人は、自動的(オートマティック)に自らを喚び出した者の命に従う。

 あれがどこの異世界から来ているかなんて、きっと喚び出した魔法使いも誰も知らない。ただ喚び出せて便利だから、使うだけ。まるで、もう考えることを放棄してしまった自我のない奴隷のように。

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