鎖に繋がれた月姫は自分だけに跪く竜騎士団長に焦がれてやまない
「酷い。そんなの。キースが選んだことじゃないのに」

 顔を歪めたオデットは、ますます許し難くなった。

(キースのような苦しい立場に立ってみれば、そんな事……とても、言えないはず。何も知らないからって……だからって)

「俺のために、怒ってくれてありがとう。だが、世間を知らないオデットでも、少し考えれば判るような……お粗末な嫌がらせを見て。あの人の真意に誰も気がついていないと思っているのは……当の本人くらいだろうな。可哀想だが」

 キースは、全く動じず面白げにそう言った。

 確かに、判り易い嫌味ではあった。だが、それを言われた当の本人は余裕綽々なので、彼はより頭に来てしまったのかもしれない。

(何も……何も、私達の事を、知らない癖に。キースが羨ましいからって、キースがこうやって言い返しもせずに我慢しなきゃいけないのも、全然納得出来ない)

「でも! あんな……あんなの事実と、全然違う。まるで、キースが私を利用出来るからと攫って来て、唆して使っているようだった。キースは私を救って、この力を使って働きたいとお願いを聞いてくれただけなのに。私が、自分であの人に事情を説明する!」

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