鎖に繋がれた月姫は自分だけに跪く竜騎士団長に焦がれてやまない
「嘘だけど……本当の事でもない……? それって、お互いに話す必要がある事なんですか?」

 オデットの尤もな意見に、キースは苦笑した。

「そのまま純粋なお姫様でいて欲しい気持ちと、着眼点が素晴らしいことに感服する気持ちで複雑だよ。貴族は話す必要など何もない美辞麗句で場を繋ぐのが、大事な仕事だ。好きでもない相手に、お互いお世辞を言ったり言われたり。そういうものだと割り切って、日々を過ごす。だからと言って、庶民は庶民で大変だ。貴族は貴族で、また悩みもあるもんだ。そんなもんだろ」

 キースはオデットが疑問に思ったことを、彼なりの意見を入れて答えてくれる。だからと言って、自分自身の考えを押し付けることもしない。あくまで、オデットが自分の意志で動こうとすることを望んでいるようだった。

(キースの、こういうところも好き……ちゃんと聞いたことは教えてくれるけど、私を言いなりになんてしようと思っていない。彼なら、そうしようと思えば簡単に出来るはずなのに)

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