鎖に繋がれた月姫は自分だけに跪く竜騎士団長に焦がれてやまない
 困ったような低い声がすぐに聞こえて、竜の頭が間近に寄せられて驚いていたオデットが顔を上げれば、赤髪で飛行船にまで救出に来てくれた竜騎士がそこに居た。

(リカルドって……リカルド・デュマース? ヴェリエフェンディが誇る、有名な竜騎士……この人だったんだ)

 オデットは、しゅんとした様子の赤竜と難しい表情で見つめ合っている背の高いその人をまじまじと見てしまった。

 その名前は、近隣諸国に鳴り響いているはずだ。敵国になるガヴェアでこの人の名前と共に語られていたのは悪鬼のように情け容赦ない恐ろしい男のようなものだったが、間近に居る彼は礼儀正しく真面目そうな美青年だ。

「彼女に何かあったら団長に怒られるの、さっき任されてた俺なんだけど。あれ……アレックが居るってことは、ゴトフリーも帰って来てるんだな。今、あいつはどこ?」

 ナイジェルの疑問に、遅れてやって来たブレンダンが苦笑して答えた。

「ゴトフリーも、さっき帰った。ここ何日か会ってないから、彼女のところに会いに行くって。急いで城に行ったよ」

「いや、一緒に偵察任務してきた俺と、報告書を纏めてから行けよ。帰れなくなるだろ。アレック。あの色ボケバカを、すぐに呼び戻せ」

 眉を顰めたナイジェルが大人しくしている緑竜を見れば、可愛いらしい声でキュウっと一声鳴いて返事をした。

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