鎖に繋がれた月姫は自分だけに跪く竜騎士団長に焦がれてやまない
 だからこそ、オデットは急に不安になった。その表情を見て取り、気がついたのかキースはすぐに少し眉を寄せてから笑った。

「悪い。別に……何かが、あるという訳でもない。それが上手く行けば良いと、そう思っていただけだ。イクエイアスの見立てによると、それは呪術的な何かで、自分であれば解呪することも可能かもしれないとそう言っていたから」

「イクエイアスって……守護竜の?」

 オデットは、彼の言葉に唖然として大きく口を開いてしまった。

 この国を守護するイクエイアスの名前は、オデットもこの国に来てから何回も聞いていた。竜騎士たちの騎竜は、かの上位竜の眷属たちで、だからこそ契約を交わしてくれる。

 ヴェリエフェンディの竜騎士団の仕組み自体が、イクエイアスがいないと成り立たない仕様なのだ。

 そんな文字通り雲の上のような存在が、オデットに埋め込まれた鎖について考えたり口にしていると思うと、どこか不思議な気持ちにはなった。

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