鎖に繋がれた月姫は自分だけに跪く竜騎士団長に焦がれてやまない
 この宝石がどこかに動けば、あちらも知るところになる。そうすれば、オデットはまだ鎖に縛られたままでいるという事になる。

 キースは慎重な考えで向こうの出方が定まっていない今で、それを知られてしまう事について危惧をしているようだった。

 もし、今この状態で彼らがオデットすら居場所がわからなくなったと知れば、何か大きく事態が動くかも知れないからだ。

 この国が最強と呼ばれている竜騎士団を有するとて、ガヴェアも世界に鳴り響くほどの魔法大国だ。だからこそ、戦力が拮抗しているからこそ、今まで互いに生き残ってこられたのだ。

「眠れないのか」

 背後からキースの低い声がして、窓の外の空に浮かぶ三日月を見ていたオデットは振り返る事なくその言葉に頷いた。

「これで私は望んでいた自由の身に、なったはずです……けれど、私はこの能力を持っている限り。常に危険が付き纏うでしょう。キースのような強い力を持つ誰かから、守られねば生きられない。そんな自分が、本当に嫌で」

「……そうか」

 背後まで近付きオデットの体を覆うように腰の辺りに手を回したキースは、それ以上の言葉を口にしなかった。

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