鎖に繋がれた月姫は自分だけに跪く竜騎士団長に焦がれてやまない
 ガヴェアに居る召喚術を使うことの出来る魔法使いたちは、異世界から召喚する術を開発して自分たちに都合の良い存在を操って使役することを研究していた。何度も何度も、きっと公開することも憚られるような実験を繰り返して来たはずだ。あの鉄巨人は、それをした上で自分たちには逆らわない存在として重宝されているのだから。

(あれは……きっと、物凄く良くない存在だわ。こうして遠くから見ているだけで、気持ち悪くなって吐きそう……あんなものを、こんな風に利用しようとするなんて……)

 オデットが観察している間に大蛇が砦に近づき、何らかの魔法を掛けようとしているように見える。

(いけない。絶対に、これは良くない方向に行ってる。どうにかしないと……でも、どうしたら良いの?)

 オデットの心の中には、焦燥が溢れた。

 異世界から未知の生き物の何かに対応する術を、砦に居る彼らはきっと知らないはず。今、下手に動くのは危険として、大蛇がどうするのかを慎重に見極めているはずだ。

 けれど、その時間がこれでは命取りになってしまうのかもしれない。

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