鎖に繋がれた月姫は自分だけに跪く竜騎士団長に焦がれてやまない
「どうせ。お前には、結局は何も出来ないだろうな。人を癒す事のみに特化した月魔法しか使えない。それがなければ守られる事しか出来ずに、何の役にも立たない人形だ」

 何度も何度も繰り返し洗脳を施すように言われ続けて来た言葉に、オデットは思わず奥歯を噛み締めた。

(私が彼らに囚われて居た時に人形だと見られていたのは、自分の心を守るために仕方のない事だった。今居るどうしようもない境遇も辛いことも、何もかも感じないように。来ない助けなんて、期待なんてしないように。自分を嘲るような人間に、何かを媚びるような真似なんて、絶対にしたくない。逃げ出しては連れ戻される私を、ゴミのように見るカイルのことを、ずっとずっと嫌いだった。でも、彼に抱いていた気持ちが何かをわからなくなってしまう程に、あの時は心を閉ざして来たんだ)

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