鎖に繋がれた月姫は自分だけに跪く竜騎士団長に焦がれてやまない
 オデットは家に帰るまでキースと二人きりになることが出来なかったから、彼には早目に伝えなければと、いよいよ決死の覚悟で口にしたのだ。

 居間へと入って重い上着を脱いでいたキースは、オデットが真面目な顔で言った告白を聞いても、特に驚いた様子もなく平然と返事を返した。

「そうか。あれだけの強い力を、使ったんだ。それも仕方ない事だろうな。俺は攻撃系の魔法しか使えないし、そもそもそれが必要な時にはセドリックが居るから、ほぼ使わない。だから、魔力を消耗し過ぎるという感覚が良くわからないんが、身体は大丈夫なのか?」

 オデットは、目が眩む程の強い光を放ち砦全体の魔法を消し去った。急激に魔力を消耗したのなら、何処か身体に異変がないのかと優しく心配までしてのけたキースに、目を瞬いたオデットは予想通りの反応でありながらも不思議になって問いかけた。

「あの……良いんですか?」

「何がだ?」

 薄いシャツだけの姿になったキースはオデットの言葉の意味が良くわからないと言わんばかりに、首を傾げた。

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