鎖に繋がれた月姫は自分だけに跪く竜騎士団長に焦がれてやまない
 二人で廊下を歩き、城の内装を見れば自然とため息が出てしまう。ヴェリエフェンディの王城は、初代王が美しいものが好きな友人イクエイアスのために造らせたという逸話が囁かれてしまう程に、細やかなで瀟洒な彫刻がふんだんに施されていた。

「そんなもの……なんです?」

 美麗な容姿を持ち誰もが憧れの役職に立つ彼には、是非自分こそが嫁ぎたいという令嬢が群れを成して殺到しそうなのにと首を傾げた。その彼の向こう側にある大きな窓の外に、何匹かの竜が編成を組み飛んで行く影を見た。

(顔見知りが多くなったって言っても。流石に、この距離からは竜って事しかわからない……どこかに、戦いに行くのかな……この国だって、最強の竜騎士団を擁しているとは言え、周辺国では小競り合いや争いばかり……戦争なんて、本当に嫌だな……)

 竜騎士団の皆は好きだが彼らが出撃して行く意味を思い、複雑な心境で飛んでいく彼らを目で追うオデットに、キースは苦笑混じりに言った。

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