鎖に繋がれた月姫は自分だけに跪く竜騎士団長に焦がれてやまない
「ダメだ。絶対、会わせないわ。俺も、この年になって、ようやく嫉妬するという、新しい感情が心に芽生えた。こういう意味だったか。確かに嫌だ。あいつは、絶対に危険だから会わせない。ダメ。結婚式にも、来るなって言っとくわ」

 彼ほどの立場にある人が隣国の同盟国の王族を式に招待しない訳にはいかないのにと、オデットは苦笑した。

「……私はキースと婚約しているし、別に姿を見るだけなら良くないです?」

「ダメだ。あれはどう考えても歩く危険物だし、行く先々で奴が何も言わなかったとしても、女がらみの騒動を起こしている。真面目な俺とは、全然違う。ダメ」

「キースは……私の事を信じてないんですか?」

「俺が、全部悪かった。だから、ちょっとしたこういう言葉のあやで、そうして泣きそうな顔になるのはやめてくれ……本当に困るから。セドリック、宿行く前に景色が良いところに行こう。お姫様のご機嫌を直す方が先決だ。マジか。この辺の情報を知らないなら、その辺飛び回って早急に探すぞ」
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