鎖に繋がれた月姫は自分だけに跪く竜騎士団長に焦がれてやまない
 オデットの住んでいたガヴェアでは、王都には堅固な魔法障壁に護られ通常であれば幻獣の類は一切近寄ることが出来ない。こうして、夕焼けの赤い空を思い思いに飛んでいる竜を見ることが出来るのはオデットには新鮮だった。

「オデット。こっちだ」

「はっ……はい!」

 初めて見る竜の飛ぶ姿をじっと見上げていたオデットは、訝しげなキースの声に呼ばれて慌てて家の中へと入った。

(……なんだか、失礼かもしれないけど……庶民的……でも、まさにこれが私がしたかった生活なんだけど……夢みたい)

 オデットは家に入り、失礼にならない程度に様子を窺った。家の中だけ特に豪華な仕様だということもなく、外観で想像した通りの庶民的な造りの家屋だった。

「オデット。俺の竜、セドリックの人化した姿だ。出来るだけ、君の傍に居るように頼んだ」

 キースが紹介するように指差した廊下の奥に立っていたすっきりとした服を着た男性は、無表情のままでこちらを見ていた。信じられないほどに、美麗な顔をしているが彼の本来の姿が竜であるとすれば、それもすんなりと納得出来た。

「オデットです。よろしくお願いします」

「……ああ」

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