鎖に繋がれた月姫は自分だけに跪く竜騎士団長に焦がれてやまない

04 月光

 キースはオデットを連れて馬車に乗り、自分の家へと帰り着いた。先ほど言っていた通り、キースは高い地位を持ち流れる血筋も高貴なのだろうが、オデットが勝手に想定していたよりかなり地味で小さな家だった。

「……セドリック。今、帰った」

 キースは扉を開けて、中へと声を掛けた。

 彼の後ろで待つオデットが周囲を見れば、真っ直ぐの通りに同じような家が立ち並び、キースの家は全体像を把握出来ないほどに大きな建物のほど近くにあった。

 何気なく空を見上げれば、飛んでいる何匹もの竜の黒い影が見える。

(竜……この国では、こんなにも身近な存在なんだ……)

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