鎖に繋がれた月姫は自分だけに跪く竜騎士団長に焦がれてやまない
 あの人らしいとても趣味の悪い、思いつきだった。きっと見張りが隙を見せたのも、指示されていたのだろう。広い草原にわざわざ降りたのも鉄巨人から逃げ回るオデットを見て、また絶望する姿をじっくりと鑑賞するためだったはずだ。

 きっと今頃は大金を産むオデットが逃げ出してしまったことを、激怒して周囲に当たり散らしているに違いない。

(ただ……こうして生まれた時から、愛されているのだから。それを有り難がれって言うの? もし、与えられたその時に要らないと言うことが許されたなら要らなかった。自分勝手な、一方的な愛など欲しくはなかった)

 月の女神に愛されているという加護を持つ赤子を、国へとあっさりと差し出し大金を受け取った両親には会いたくもない。

 キースは、オデットに自分が窮地にあると思うなら何か武器を持てと言った。

 オデットの手に今あるのは、これだけだ。月魔法で、人の不調をすべて回復させてしまうこと。

 ただ、それだけ。

 そうして自分が何をしたいのか、何を得たいのかも……今は何もわからない。

(その愛が、私の自由を奪うのなら……愛されたくなんてなかった)

 光り輝くような丸い月は美しく、黒い夜を照らした。

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