鎖に繋がれた月姫は自分だけに跪く竜騎士団長に焦がれてやまない
「お姫様が、ある程度下界の生活に慣れるまで。その後は、セドリックを護衛につける。このところ、俺が出て行かねばならぬような、大きな出撃も少ない。当分は城に籠って仕事でもするさ」

 キースが机に肘をついてアイザックを見遣れば、彼は椅子にもたれかかりながら頭の後ろに両手を回して大きく息をついた。

「なんだよ。別に自分の竜を、警護につけずとも……お姫様には、最初からブレンダンでも護衛につけときゃ良いだろ。あいつなら、口も上手いし大抵の女性は喜ぶ」

「あー……ブレンダンは、早急に決まった女性を作るべきだと思わないか……ヴェリエフェンディの平和のためにも、急務で」

 片肘をついたまましみじみした口調でそう言ったキースに、アイザックは何か妙な事を言い出したと言わんばかりの顔になった。

「はあ? まー、あいつが特別女受けが良いのは、騎士学校通いの頃から有名だったから、今更だろ。同期のリカルドには、婚約者も居たしな」

「商人の息子だから、機知も利いてて口も上手い。隙がない。向かうところ、敵なしだな」

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