鎖に繋がれた月姫は自分だけに跪く竜騎士団長に焦がれてやまない
「恥ずかしい……? どう言うことだ?」

 セドリックは、訝しげに眉を寄せた。

 竜の彼には、複雑な心中はわからないかもしれない。オデットの心の中にある、何も出来ない自分への苛立ちや焦り。稀有な能力があるがゆえに、それだけでしか判断されなかったという過去への悲しい思い出も。

「キース様は私を危険から助けてくれて、心配してくれた上に、泣かせてしまったとちゃんと謝ってくれました。そんな人の前で思わず涙を溢し、不本意ですが被害者であるかのように振る舞ってしまった。自分が情けなくて、とても恥ずかしかったんです」

「……君は、まるで年端もいかない子どものようだな。心模様が、純粋過ぎる」

 セドリックは、オデットにはわからない不思議な事を言った。

「……心模様、ですか?」

「竜は、人の心模様を見ることが出来る。だから、竜騎士には大抵の竜が好むような高潔な精神であることが求められる……そういう建前で竜が契約する竜騎士を選ぶ基準は曖昧で、その竜の個体にしかわからないものだがな」

「心の中が……」

 そういえば、彼が竜の姿であった時に声を出す事なくキースと会話をしているところを見た。

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