鎖に繋がれた月姫は自分だけに跪く竜騎士団長に焦がれてやまない
「あー? うわ……思い返してみると、なんと恐ろしい事に、二十年になる。騎士学校に入学してから、ずっと一緒だな」

「二十年……私の年齢と同じですね」

 自分の生きてきた時間とそのまま同じ時間を、共に過ごしていると思うと、彼らがあれだけ仲が良いのも頷けるような気がする。

「はー……若いなー。俺も。若い女の子に若くて羨ましいと言ってしまう、おじさんになってしまった。世知辛いもんだわ」

「そんな……! キース様が、おじさんだなんて……」

「ははは。冗談だから。そんなに、慌てて否定しなくても良い。けど、ありがとう。そうか。二十年、長いようで早かったな。あいつ以外にも、同期は居るんだが……中には、死んだ奴も居る。居なくなられた時は長い時間を過ごした分だけ、自分の身を切られるように辛かった。オデットも後悔ないように、生きてくれ。人生は、一回しかない」

「キース様……」

 オデットが慌てて飲んでいたお茶の入ったカップを下げると、彼は片手を上げて空気を軽くするようにして振った。

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