鎖に繋がれた月姫は自分だけに跪く竜騎士団長に焦がれてやまない
 頬を赤らめたオデットが、彼にそう言うとキースは目を細めて笑って言葉を返した。

「素敵? 俺が? 気分が良くなるから、何回でも気の済むまで言ってくれ……あー、悪い。わからないかもしれないが、これも冗談だ。別に、真に受けて言わなくて良い。君は知らないと思うが、若くない男はだんだんと面白くない冗談を言うようになる。辛いわ。大抵の竜は、自分の竜騎士を好きだよ。いつも一緒に居るから愛着が湧くんだろ……さあ。オデット。食事も終わったし、風呂に入って来た方が良い。外に出て、冷えたろ?」



◇◆◇



 彼は何も悪くないと言うのにキースは外に飛び出したオデットの事を思って、風呂の用意までしていてくれていたらしい。

 オデットがゆったりとした浴槽に身体を伸ばすと、ちゃぽんと天井の雫が湯に落ちて水音がした。自分の胸元へと、指を這わせた。

 そこには、きらめくいくつもの宝石がある。首飾りをしている訳ではない。オデットの白い肌に、ある魔法を使って埋め込まれているものだ。

 この宝石に縛られているから、オデットは逃げ出せたとしても本当の意味では自由にはなれない。

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