鎖に繋がれた月姫は自分だけに跪く竜騎士団長に焦がれてやまない
 アイザックが「普通の女の子は、こういう物が必要なんだ」と用意してくれたお洒落な外出着に着替えながらオデットは、うきうきと胸を高鳴らせた。

 物心ついた時から「魔法が使える状態なのに、使わなくて良い」という状況も、こうして癒しの月魔法を求めて自分を訪ねてくる客とも会わなくて良いのも初めてのことだったから。

 キースはオデットの持つ能力を自分のために使わせようだなんて、思ってもいないようだった。ただ、普通の生活をして出来ていく事が増えるたびに喜んでくれた。

 階段の下でオデットを待っていたキースは、帰った時は団長である彼にだけに許された意匠のついた黒い竜騎士服を着用していたが、今はもうそれも脱いで楽な服に着替えている。簡素な装いだというのに、だからこそ輝くような魅力的な人だった。

「……可愛いな。その色は、オデットに似合うと思う」

「ありがとうございます」

 キースは今自分が着ている爽やかな緑のワンピースの話を言っているのは、きちんと理解はしているのだが彼のような人に褒められて悪い気はしない。

 満面の笑みで喜ぶオデットに、キースは伺うようにして言った。

< 66 / 272 >

この作品をシェア

pagetop