鎖に繋がれた月姫は自分だけに跪く竜騎士団長に焦がれてやまない
 その時に、近くを通り掛かった竜騎士の一人が、右腕を大きく怪我をしているのを見つけたのは偶然だった。大した治療もせず、戦闘中に剣で切り付けられたものか。布を巻き付けてはいるものの、だらだらと多量の血が流れたままになっている。

「あのっ……私、怪我を癒す事が出来るんです。もし、良かったら……」

 もしかしたら助けられるばかりだった自分にでも役に立てるかもしれないとオデットが駆け寄って、身体の大きな彼を見上げれば驚いた顔のままで頷いた。

「え? 癒し魔法を使えるんですか? ……お手を煩わせてしまい、すみません。では、お願いしても良いですか?」

「はい」

 少し戸惑った様子の彼の右腕に手を当てて、オデットは癒しの月魔法を使った。

 突如白く眩い光が辺りに満ちて、周囲から驚く声がいくつか聞こえた。瞬く間に大きな怪我があった部分は新しい皮膚に覆われて、流れ落ちた血だけを残し、もう切り傷があったことすら分からなくなってしまった。

「こんな……すごい……」

 彼は信じられないと言わんばかりに呟き、怪我を治せた安心感にほっと息をついたオデットに慌てて頭を下げた。

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