だって、君は俺の妻だから~クールな御曹司は雇われ妻を生涯愛し抜く~
「なら他のアクセサリーは?」

「え?」

 どうして指輪以外の話になるのか。ついていけない私に、久弥さんは早口で捲し立てていく。

「ネックレスやイヤリング、ブレスレットや時計でも。瑠衣がつけやすいものがあったら」

「だ、大丈夫です。アクセサリーは今日、服と一緒にたくさん買っていただきましたから」

 勢いづく彼を慌てて制する。

 久弥さん、急にどうしたんだろう。普段からもっとお洒落しろっていうこと? 久弥さんの妻にしてはやっぱり私は地味?

「そうじゃない」

 私の考えを読んだのか、久弥さんがおもむろに否定した。

「パーティーのときだけじゃない。いつも瑠衣が身につけられるようなものを贈りたいんだ」

 ちらりと隣に顔を向けると、こちらをじっと見つめている彼と目が合う。

「ありがとうございます。でも私、久弥さんと結婚してすごくよくしてもらっていて……もう十分なんです」

 母の手術の件だけじゃない。誰かがそばにいる心強さや、こうして触れ合って与えられる安心感は彼と結婚しないと得られなかった。私にはもったいないほどの幸せ。

 至近距離で交わった視線が絡み合い、緩やかに顔を近づけられ目を閉じる。唇が離れ、わざとらしく久弥さんにもたれかかった。照れ隠しもあってわざとらしく瞬きを繰り返していると、彼は包み込むように私を抱きしめ、頭を撫でる。
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