だって、君は俺の妻だから~クールな御曹司は雇われ妻を生涯愛し抜く~
 ただのクラスメートから親しくなって、付き合う流れになって……。なにもおかしくはない。普通の付き合いだと思っていたのに。

『そう。でもこうやって疑われてしまう環境にあるのは、不幸ね。あなたに息子は荷が重すぎると思うの。世界が違いすぎるもの』

『……帰ります。お邪魔しました』

 あふれ出そうな感情や言葉をすべてこらえて、たった一言だけ告げてその場を去る。ふたりの顔は見られなかった。見たくなかった。

 町原くんは現れることなく、彼の家をあとにする。

 ひとりになると、我慢していた気持ちが一気に吹き出そうになった。

 あからさまに見下されて、馬鹿にされて……。怒りや悲しみで胸もお腹も痛い。

 今までいろいろあったけれど、あそこまで一方的にひどい態度をとられるのは初めてだ。

 情けなくて涙があふれそうになるのを強引に指で拭う。泣いたら負けだ。認めるわけにはいかない。私だけじゃない、母まで侮辱されたんだ。

 激しく落ち込んで帰宅した私を、母はとても心配してくれた。本当のことなど話せるはずもない。

 翌日、学校で町原くんに会い、彼から謝罪を受けたが、受け入れるのは無理だった。彼も母親にいろいろ言われたのだろう。

 それでも付き合おうと言えるほど、お互いを強く思う気持ちは私たちにはない。周りに聞かれたら受験生になるから別れたと告げ、お互い気まずいままほぼ自然消滅のような形となる。

 それからしばらくして彼が医学部に推薦で合格が決まったことと、有沢さんと付き合いだしたことを聞いたけれど、もうどうでもよかった。
< 132 / 193 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop