だって、君は俺の妻だから~クールな御曹司は雇われ妻を生涯愛し抜く~
「なにも、ないですよ。私と結婚していても、久弥さんの欲しいものを私はなにもあげられません」
おずおずと声にして、そのたびに痛みを伴った事実として自分に刺さる。光子さんに私たちの関係が知られた今、彼にとって私が妻でいる意味はなにがあるんだろう。
「久弥さんにとって、ためになるうしろ盾も肩書きも……なにも、ないです」
せめて彼と釣り合いのとれるくらいの家柄だったら、目を見張るような経歴で優秀だったら……。
でも、やっぱりいらない。今の私が私でいるのは、自分を取り巻くすべてのものを受け入れてきたからだ。それを否定したら私が私ではなくなってしまう。
「瑠衣にそんなものを求めた覚えはない」
久弥さんにきっぱりと否定され、唇を噛みしめる。
わかっている。久弥さんが私を必要とした理由はあくまでも光子さんのためで……。
「なにもないのは、俺の方なんだ」
久弥さんがぽつりと呟き、私は反射的に顔を上げた。どこか痛みをこらえるような表情の久弥さんから目が離せない。
「瑠衣がそばにいないと、こんなにもなにもないって……気づいたんだ。俺は臆病ですべてに予防線を張って、割り切っていないとやってこられなかった」
久弥さんから視線を逸らさず、静かに彼の言葉に耳を傾ける。両親を亡くした彼の傷は、私が想像するよりずっと深かったはずだ。私は久弥さんをどこまで理解していたんだろう。
おずおずと声にして、そのたびに痛みを伴った事実として自分に刺さる。光子さんに私たちの関係が知られた今、彼にとって私が妻でいる意味はなにがあるんだろう。
「久弥さんにとって、ためになるうしろ盾も肩書きも……なにも、ないです」
せめて彼と釣り合いのとれるくらいの家柄だったら、目を見張るような経歴で優秀だったら……。
でも、やっぱりいらない。今の私が私でいるのは、自分を取り巻くすべてのものを受け入れてきたからだ。それを否定したら私が私ではなくなってしまう。
「瑠衣にそんなものを求めた覚えはない」
久弥さんにきっぱりと否定され、唇を噛みしめる。
わかっている。久弥さんが私を必要とした理由はあくまでも光子さんのためで……。
「なにもないのは、俺の方なんだ」
久弥さんがぽつりと呟き、私は反射的に顔を上げた。どこか痛みをこらえるような表情の久弥さんから目が離せない。
「瑠衣がそばにいないと、こんなにもなにもないって……気づいたんだ。俺は臆病ですべてに予防線を張って、割り切っていないとやってこられなかった」
久弥さんから視線を逸らさず、静かに彼の言葉に耳を傾ける。両親を亡くした彼の傷は、私が想像するよりずっと深かったはずだ。私は久弥さんをどこまで理解していたんだろう。