だって、君は俺の妻だから~クールな御曹司は雇われ妻を生涯愛し抜く~
「瑠衣は温かいな」

「んっ」

 肩口に顔をうずめられ、低く囁かれる。そろそろと彼の背中に甘えるように腕を回した。

「ずっとこのままでいてほしいです」

 この温もりを手放したくなくて希望を口にすると、どういうわけか久弥さんが軽く身じろぎした。顔を上げた彼は、困惑気味に笑う。

「そうしてやりたいのは山々なんだが……」

 珍しく歯切れの悪い久弥さんに、なにかまずい発言をしたかと不安になった。

「あのっ」

 尋ねようとする前に久弥さんは私の首筋に口づけた。完全な不意打ちで叫びそうになる。しかし彼はかまわずに薄い皮膚に舌を這わせていった。

「久、弥さん」

 助けを求めるように彼の名を呼ぶと唇が重ねられる。

「あとでいくらでも抱きしめてやるから。先に瑠衣をもっと愛してからだ」

 言い終わるや否や、彼は唇や舌、手を使って私に触れていく。

「あっ……やぁ」

 与えられる刺激に体がびくりと震える。体の中に熱がこもって、発散したいのにできないもどかしさに爪先でシーツを蹴った。

 言葉通り久弥さんにたっぷり愛され、私は彼に溺れていった。


 肌を重ねたあと、久弥さんに背後から抱きしめられ、あがっていた息が徐々に落ち着く。汗ばんだ肌にぴったりと密着され、心地よさに微睡みそうだ。だからか、つい気になっていた件が口を滑る。

「久弥さんって、子どもは……」

 そこで我に返り、久弥さんの反応をうかがおうとした。彼は子どもがいらないと言っていたから、もしかしてタブーだったかもしれない。

「瑠衣との子どもなら可愛いだろうな」

 ところが回されている腕に力が込められ、穏やかに呟かれる。
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