だって、君は俺の妻だから~クールな御曹司は雇われ妻を生涯愛し抜く~
『久則さんがね、久弥にTOGAコーポレーションを継ぐ資格がないって言ったのはね、あなたのそのすべて割り切って諦める性格から言ってたの』

 お互いの意思を確認し合って、これからも結婚生活を続けていくと光子さんに報告するため、久弥さんと病室を訪れた際、光子さんは心から喜んでくれたあとに、ぽつぽつと語りだした。

『久弥の境遇からある程度はしょうがないと思っていたわ。けれど、その危うさをずっと久則さんも心配していた』

 久弥さんは複雑そうな顔で黙って光子さんの話を聞いている。しかし光子さんは私を一度見たあと、柔らかく笑った。

『でも、瑠衣さんと出会って、あなた変わったわ。なにがあっても諦められない大事なものができたんでしょ? 守りたいものが。久則さんもきっと安心していると思う』

 久弥さんは大きく息を吐き、前髪をくしゃりとかいた。

『俺は……もうTOGAコーポレーションを継ぐ気はないし、未練もない。ただ、そうだな。じいさんに何度か言われたけれど、そのときは意味がわからなかった』

 どこか寂しそうに告げる久弥さんに、光子さんはいつもの余裕たっぷりの笑みを浮かべた。

『いいのよ。あなたが幸せになってくれたら。私も久則さんも、あなたの両親だっていつもそれを一番に願っているんだから』

 それから、光子さんから改めて久弥さんに対する態度について、久光氏に強めに話をしておくと言われる。完全には無理でも、少しでも歩み寄れたらいい。
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